
ビッグコミックスペリオールで連載中『江川と西本』
最新話が、2019年5月24日に発売された
ビッグコミックスペリオールに掲載されました。
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江川と西本【最終回】のネタバレ「ピッチャーフライ」
最終回 ピッチャーフライ
1981年日本プロ野球日本シリーズ第6戦。
優勝に王手をかけた巨人軍のピッチャーは江川。
9回2アウト。
最後のバッターが打上げたピッチャーフライでボールが上がる。
ここで現在の江川氏のインタビューが入る。
ボールがホップするという秘密について本人が語っているのだ。
その始まりは天竜川での「石投げ」からであった。
石投げを繰り返すうちに今度は川の向こうへ届くように考える。
普通に投げたら100m先には届かない。
平たい石を風に乗せていく投げ方がストレートを浮かせる投げ方と同じだというのだ。
シロートには理解しがたい独特の感覚。
一般には球場に吹く風を意識して、ストレートや変化球などを上手く投球していく。
時には無風の時もある。
しかし、江川のストレートは風に関係なくホップしているように見えたのである。
したがって、風とボールのポップは矛盾しているように感じる。
それでも風と体が一体化する感覚が優れてはいるのだろう。
そしてもう一つ。
江川氏はボールのリリースについても語り始める。
普通のツーシームは縫い目に指をかけて押さえつけるか、前に押し込む。
江川氏の場合はむしろ「抜いて投げる」投げ方で明らかに他とは違う。
他のピッチャーならばまず指が縫い目にかからない。
それが可能なのは投球フォームによるものか、
そもそもリリースが可能なのか?
とにかく、作者の感想からすればストレートに限っていえば、現在でも江川を上回ったピッチャーは出現していないと思っている。
当時ライバルだった西本氏の感覚ではこうだ。
江川の球種はストレートとカーブの2種類だけ。
いかにストレートが凄かったかという証明になる。
しかし本当に凄かったのは「精神力」だと言う。
日本中を騒がせた入団騒動。
普通の人ならば潰れてしまいそうな逆境を跳ね除けた江川こそ「精神力の男」だと評価していたのだ。
実のところ江川氏は、入団当初は西本よりもトレードで出された小林を気にしていた。
しかしある時期に西本が視界に入ってきたと言う。
場面は戻って日本シリーズのラスト。
中畑と原を制してピッチャーフライをキャッチした江川。
ゲームセットで藤田監督が率いる巨人が日本一の栄冠に輝いた。
シリーズMVPは1完封を含む2勝した西本。
ペナントシーズンのMVPは江川が受賞した。
本来ならば記者会見するはずの江川はゴルフ。
これは沢村賞に対するマスコミへの江川のささやかな反発であった。
この年以降、沢村賞の選考方式は改められる。
江川は現役9年で135勝72敗。
西本は現役20年で165勝128敗。
真の勝者はどちらであったのか?
片方が勝てばまた片方が勝っていく。
江川と西本【最終回】ネタバレの感想
80年の巨人の2大エースの物語ここに完結。
最後81年優勝で作品としては幕を閉じたが、翌年の西武との日本シリーズの激闘や、江川の引退、西本の移籍、まで執筆を続けて欲しかった気もする。
とはいえ、全般を通じて両投手への綿密な取材は随所に描かれていた。
まさか優勝のウイニングボールがドサクサで無くなっていたなど知らないウラ話も興味深々だ。 ピッチャーの栄誉である沢村賞の選考方式に影響を与えるなど、2人の凄さは今にも伝わったことだろう。